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「な、なにとは。晴明も存じておろう?さすがに詳しいことは知らぬじゃ。」
「さようで?」
切れ長の美しい目がすっと睨む。
つくづく、保憲はこの弟弟子がもう少し醜男であればこんなにうろたえぬのにと思う。
「しかし、保憲様。あなた様が面倒がったおかげで博雅は・・・」
「すまぬ・・・私もできるだけのことはするでの。」
「できるだけ?していただかなくては困りますよ。」
晴明の美しい顏がそっと睨む。
美しいだけあって恐ろしさ増大である。
「ところで晴明。その話はどこから聞いたのじゃ?」
「早苗の君より。」
「誰じゃそれは?」
そもそも聞いたことのない人物。そんな者の名が聞こえたため驚く。
「さぁな。誰でも良いではないか。」
「通うてるおなごか?」
「誰でも良いというておるわ。保憲様。必ずや博雅を見つけますぞ。」
相変わらずの怖い顔であったがその切れ長の目の色が僅かに変わったのに保憲は気づいた。
「う、うむ。此度のことはたしかに私の手落ちであった故な。私も全力を尽くす。」
「言ってくれましたね。必ずや・・・」
晴明は帰っていった。
「やれやれ。晴明は博雅となると見境が無くなるからな・・・」
殺されかねないと呟きながら保憲は床に入った。
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