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「・・眠い」
和樹は目が半開きのまま、ベッドから立ち上がろうとしない。
「眠いじゃねえよ。早く飯済ませて現場に行くぞ」
珍しく父親が起こしに和樹の部屋まで来ていた。
「・・あと5分」
和樹は完全に目をつむってしまっている。
「遅刻したらてめえ今月から時給制にするぞ」
父はそう言い残し、部屋から出て行った。
定時の奴らはほとんどみんなが昼間は働いている。
和樹も例外なく働いているが、違うのは実の父の下でってことだ。
和樹のおじいさんの父からずっと受け継がれているこの家業は、セレブのように生きることはできないが、一般家庭よりはずいぶんと贅沢な暮らしはできる。
業種は、建物の外装塗装だ。
和樹は中学を卒業し、すぐに始めた。小さい頃から真剣な顔でペンキを塗る父親の姿を憧れていたのだった。
父は、長男が自分の道を歩み始めてしまっただけに、和樹のその気持ちは心から嬉しいと思った。
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