プロローグ:旅立ち

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『異世界』    この男心をくすぐる魅惑てきな言葉に、一度は皆、惹かれたことがあると思う。  もちろん俺もそのなかの一人であり、自分で言うのもなんだが、そこら辺の人たちよりもこの言葉に思いを馳せたと思う。  現実世界で出来ないことでも『異世界』なら出来てしまう。  凄いスピードで走り、飛ぶように跳ぶ。  自分の剣技や魔法を駆使し、村や町、更には国さえも救ってしまう。  そんな自分を想像するだけで現実の自分なんて忘れることができた。  もちろん、この科学が発展した現代でそんなことを本当に信じてるやつなんていない。  もしそれを本気で信じてるなんて奴がいるなら、それは馬鹿か気違いだ。  でも、俺には『異世界』の想像をやめることが出来なかった。  別に苛められているわけではない。  友達がいないというわけでもない。  だけど、運動も勉強も中の下、身長にいたっては17歳なのに164cmだ。  そして唯一ある特技は人より動体視力がいいというだけ...  そのせいで俺は自分に自信がもてないのだ。      俺は今、近年急速に発展した祭り、エクストラフェスタに足を運んでいる。  エクストラフェスタは10年前急に開催され、学生のみ参加が許された特別な祭りだ。  当初はあまり参加者がいなかったようだが、お金はあまりかからないし、趣向を凝らした催しがおおく、そしてなにより剣と魔法を駆使し戦う体感アクションゲーム、エクストラバトラーズの優勝賞品が破格なため、今では全国から学生が10万人近く集まる超大規模な祭りとなっている。  さらに今年は、開催されてちょうど10年目のため、何か大きなイベントが開催されるとも言われている。  その為、参加者もさらに増えると予想されていた。  俺は今までこの祭りに参加したことがなかった。  だけど、ここでなら自分に自信がもてるきっかけがあるかもしれない、そう思って今回は参加を決意したのだ。
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