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そうして、葵さんのごはんであるカリカリキャットフード「健康にゃんこ 鮪と鰹と時々野菜」の箱をいつもの棚から取り出す。あれ、軽い。
「……あっ。大変だ弘、カリカリがそろそろお亡くなりになる」
「お前どうせ定時だろ。俺多分このままじゃ明日は深夜残業になりかねないから、帰りに頼む」
「了解。じゃあ帰りにペットショップ寄ってくる」
葵さんにカリカリをあげながら答える。弘はそこそこ大きなIT系企業のSEで、帰りが夜遅いどころか出勤したら次の朝まで帰ってこないなんて事はざらだ。それに引き換え、僕はちっぽけな会社の事務員で、やる事をきっちり済ませれば定時で上がっても誰も文句を言わない。
もう一人、ここには同居人が居る。僕の弟の竹中実(たけなか みのる)。介護士で職場はシフト制、今日は日曜日だというのに夜勤があると朝言っていたため、もう職場に向かっている頃だろう。
「そういえば真。お前のクラスって確か、一人死んじゃった子がいたよな」
「……うん? ああ、そういえばそんな子がいたなあ」
――今日でこそ居酒屋に集まってワイワイキャーキャーやっていたが、弘のいた6年2組とは違い、6年3組は色々と隠れた問題の多かったクラスなのだ。
クラスメートの死と隠れた問題。言わずもがな、いじめというものの存在で、当時クラスメートに対して無関心で尚且つ地味で目立たないという分類に位置づけられていた僕にとっては、大事になるまで無縁のものだった。嫌なクラスメートはそれはいたが、ただそれだけでほとんど無視だ。無視していれば相手にもされなくなるし、休み時間はほとんど図書室にいたためそう言った現場に直面したこともあまりない。
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