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「アタシが性転換したのはね、素敵な彼氏ができたからなのよ!」
聞いてないよ。聞いてないから語りださなくていいよ。でもこれちゃんと聞いてあげないと、いつまでたってもトイレに行けないフラグって言う奴ですよね。わかった、聞いてあげよう。
「男の彼氏って事は、ホモの方ですか」
「ノンケよノンケ!」
「え」
意味がわかりません。
「アタシが男だって分かってるのに、恋人になってくれって告白されたの! けれども彼ってば他の女にデレデレしちゃってね」
何度でも言いましょう。意味がわかりません。そりゃノンケだったら女が好きでしょうよ。
「女の方がいいのかって悩んだ末に。ついてるモン切り取って穴開けたのよ」
「は、はぁ……」
あの、よくわかんないけど聞いててすっごく痛いのは分かります。アイタタタタタ。
「そしたら彼、なんて言ったと思う?」
「いや、皆目見当つきません」
「確かに女の方が好きだ。というか、男になんて興味はない。それでも敢えてお前を選んだ。……ですってよ!!」
あームカつくと荒れながら、雄太もとい優子はジョッキのビールを飲み干した。昼間からジョッキって。自重しましょうよ。
「わざわざ?」
「そう、わざわざ!! ノンケで女好きの癖にわざわざ!!」
本日の心中で合掌二回目。意味がわかりません。
「だから腹いせに、思いっきり金玉何度も踏みつけてからほっぽり出してやったわ! それから彼の荷物全部着払いで送ってやったの!」
だからね、聞いてるこっちが痛いんですって。色々と。
「それからアタシ、No.1のオカマを目指して夜の歌舞伎町で日々奮闘してるのよ!」
「はぁ、そうですか」
オイ誰かこの酔っ払ったオカマ回収しろ。僕はトイレに行きたいんだ。
「……」
「ユウちゃんこっちで私と話そう。君の話にすっごい興味あるから詳しく聞きたいな」
「ホントぉ? もう、聞いて聞いて~」
そこで僕の危機に気づいてくれた山本さんが、優子に声をかけた。ナイス山本さん。それから優子にはご愁傷様。山本さんに詳しく話したらきっと小説のネタにされるぞ。
「……はぁ」
本当に、どうして僕は同窓会になんて参加してしまったのだろう。
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