夜行タクシー

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2時間前。 田所 義光が手を挙げると、前方からやって来た白いタクシーは止まった。 ガチャン、と後部座席のドアが開き、血が飛び散ったレインコートを着たまま乗り込んだ。 「どちらまで?」 さらっとそう聞きながら、運転手はチラッと、ルームミラー越しに此方を見た。 恐らくは、恐怖におののき、このタクシーから逃げ出すだろう。 田所はそう思っていた。もし逆の立場だったなら、自分は逃げ出してしまうからだ。 逃げ出すのなら容赦はしないつもりだった。いつでもいい。準備は出来ている。 田所はレインコートのポケットに手を入れ、まだ温かい血がこびりついたナイフを握った。
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