夜行タクシー

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「今日…初めて人を殺した」 田所がボソッと、そう呟いたのは、タクシーが走り出してから40分程が経った頃だった。 運転手はフッと笑い、ルームミラー越しに、またもや語った。 「俺は、高3の頃だったな…初めての殺人は、ある種…興味本意だったと言っていい。」 「興味本意?」 「ああ、俺は殺人でしか満足しない、言うなれば中毒化してしまった…興味本意でした一回。それを皮切りに、俺は各地を転々として殺人を犯し続けた」 運転手は、何故か大層悲しんだ様子で話を続けた。 「そして今日、あんたと出会った」 気のせいか、運転手の声は興奮じみていた。心なしか、周りの景色は森へ近づいているように思えた。 民家は少なく、どれも古びていて、それでいて周りは明かりひとつ無い。 前方を見ると、月明かりに映し出された山の影があり、それは真っ暗な、この世の闇のような、そんな感じがした。 今までの僅かな話を聞く限り、このタクシーは夜にしか走らず、そしてこのタクシーに乗った者は… 田所の額には、いつの間にか汗が浮かび上がっていた。初冬、それも吹きさらしの田舎道の真ん中、凍える寒さの筈のこの空間に、何故か汗が滲み出て仕方なかった。 田所は再び、ポケットの中のナイフを握った。
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