4人が本棚に入れています
本棚に追加
新幹線をおりて、さらに知らないローカル線に乗り換えて。
流石に単線ということは無かったが、東京では見慣れ無い光景が広がっていた。
「あの、このバスは、新田って方面に向かいますか?」
駅で帰宅途中のオジサンに声をかけると、ちょっと迷惑そうな顔で、それでも都内ではないくらい丁寧に教えてくれた。
「このバスじゃむりだね。1時間後にくる、公民館行きのに乗りなさい。
途中の新田というバス停の近くだろう」
「ありがとうございました!」
”どこまで行っても150円で乗れるから”
そう言って、オジサンはバスに乗って行ってしまった。
山に囲まれた静かな町に、更に音を消していくかのように雪が降る。
駅前だっていうのに、コンビニも見つからない。
タクシーに乗ろうと思っても、そのタクシーが一台も止まっていない。
何も持ってこなかったから、勿論傘だってない。
駅舎という駅舎も無くて、屋根のついた改札に、一応と言える程度に、二台の改札機が並んでいる。
ほとんど外と変わらない状況で、雪が凌げる程度。勿論、ベンチは冷たい。
「…ばか、凛」
こんな所に来て、何が大丈夫だ。
念の為確認したバスの時刻表だって、1時間に1本しかなかった。
朝の通勤の時間にだって、2本しかない。
それも、左回り、右回りって、なんだよ。
どんなセンスだよ??
外は寒くて、耳が痛いくらいで。
こんなところに、引っ越してきて。
せっかく出来た友達とも別れて。
3年生の、この時期に…。
辛くないわけなんて、ない。
最初のコメントを投稿しよう!