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「ビニールハウス、ビニールハウス」
まっすぐな道の先に、テレビでしか見たことのない大きさのビニールハウスが飛び込んできた。
「・・・・・でか」
その手間。
都内であれば、何軒家が建つか?というくらいの距離が離れた場所に、その家はあった。
『野宮』
立派な門扉に、御影石の表札がかかっていた。
「…これ、押せって?」
しかし、それ以外に道はない。
ここまで来て、今更 後悔の念がひしひしと湧いてきた。
すると、よそ者の気配を感じたのか、塀のうちから、犬の鳴き声が聞こえてきた。
「ちょ、まて!今、ちゃんと呼び鈴押すから!」
犬にせっつかれるように、呼び鈴を押そうとした瞬間。
明るい光が差し込んだ。
「シロ~?ごはん食べたでしょう?こんな時間に吠えたら近所迷惑でおこられちゃうよ」
それは、聞きなれた声だった。
「どうしたのシロ。なにか居たの?狸??キツネ??」
をいをい、なに普通に聞いてるんだよ。
狸とかキツネとか、居んのかよ。
……いや、ここなら居るかもしれない。
それに犬に話しかけるのも、なんだか凛らしい。
そう思えば、すでに呼びかけていた。
「凛!」
扉の向こうに声をかける。 昔みたいに、ごく自然に。
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