2/11
前へ
/39ページ
次へ
「ビニールハウス、ビニールハウス」  まっすぐな道の先に、テレビでしか見たことのない大きさのビニールハウスが飛び込んできた。 「・・・・・でか」  その手間。  都内であれば、何軒家が建つか?というくらいの距離が離れた場所に、その家はあった。 『野宮』  立派な門扉に、御影石の表札がかかっていた。 「…これ、押せって?」  しかし、それ以外に道はない。  ここまで来て、今更 後悔の念がひしひしと湧いてきた。  すると、よそ者の気配を感じたのか、塀のうちから、犬の鳴き声が聞こえてきた。 「ちょ、まて!今、ちゃんと呼び鈴押すから!」  犬にせっつかれるように、呼び鈴を押そうとした瞬間。  明るい光が差し込んだ。 「シロ~?ごはん食べたでしょう?こんな時間に吠えたら近所迷惑でおこられちゃうよ」  それは、聞きなれた声だった。 「どうしたのシロ。なにか居たの?狸??キツネ??」  をいをい、なに普通に聞いてるんだよ。 狸とかキツネとか、居んのかよ。  ……いや、ここなら居るかもしれない。  それに犬に話しかけるのも、なんだか凛らしい。 そう思えば、すでに呼びかけていた。 「凛!」  扉の向こうに声をかける。 昔みたいに、ごく自然に。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加