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ちょっと恥ずかしそうに、凛が頷く。
「そう言えばさぁ、ここに来るとき、そのバスに乗ったんだけど。
すぐそこの道で下されて、そしたら、行き先表示が”回送”とかになってさ。
俺乗ったときは、”公民館行き”だったはずなんだけど。
あれって、どういうこと?」
「ああ、それでバスの音がしたんだ。変だなぁとは思ったんだ。
あのね、この時間帯、バスは中新田の停留所に止まらないの」
「は?だって、駅で聞いたら、オジサンが」
「きっとこっちの方まで乗らない人だよ。
ただの新田と、中新田、下新田があるのね。
新田から中に入ってきて、五分くらいかけて中、下と円を書くように回って、また新田に戻って、次のバス停に行くの。
朝夕の人が乗る時はここの集落を回るんだけど、それ以外はこっちまで来てくれないの」
「・・・え?でも、俺、そこまで乗せてもらったけど」
「ローカルもローカルだからね。
運転手さんも良い人たちばっかりだから、私も寝坊したときとか、停留所じゃなくても乗せてくれるし。
浩之が新田二丁目って言ったから、わざわざこっちまで回ってくれたんだよ」
それで、回送。
きっと通常のルートに戻ったら、そしらぬフリで公民館行きへ戻すのだろう。
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