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「へぇ~、なんか、良いな。そういうの」 「うん、なんか、いいよね」  コンビニの無い、バスも1時間に1本しかない田舎町。 だからこそ、人と人とが繋がっていて、あたたかい。 「俺、こなくても、本当に大丈夫だったかもな」  だって、ここにいたら、一人じゃない。  気の良い運転手や、あたたかい祖父母がいる。  もしかしたら、都内で一人で冷えた飯を食ってる俺より、恵まれてるかもしれない。 「・・・・・・・・・・・・・・        そんなこと、ない」  今まで顔を上げていた凛が、俯いてしまった。  長く伸びた髪がカーテンのように表情を覆い隠してしまう。 「凛」 「・・・・嬉しかった」  手を伸ばして、髪の毛を耳にかけてやる。  その手を捉えたまま、凛が顔を上げた。 「本当は、ずっと寂しかった! 本当は、引越しなんかしたくなかった! 前の学校で、友達も出来たのに! これから受験だねって、別の大学に行っても友達でいようねって! 受験が終わったら、また遊びに行こうねって言ってたのに!」 「凛」 「文化祭も、体育祭も、いっぱい思い出もあったけど、 でもね、 でも、そこには浩之が居なかった! いなかったんだよう!!!!」  顔をくしゃくしゃにして、小さなガキみたいに泣きじゃくる。
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