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「・・・お前、溜め込みすぎ」 「わかってるよ!でもさぁ、困らせたくなかったんだよぅ! 引越ししたくない、みんなと離れたくない、そんなこと言ったって、お母さん苦しめるだけなんだもん。 父さん出て行っちゃって、お母さん病院のお仕事増やして、それでも厳しくって。 ここに帰ってくるって、 やっと決めたんだよう。 それなのに、私だけ残りたいとか、わがまま言えないよ!」  次から次へと流れ出る涙は、一体いつから溜め込まれたものだろう。 「親に言えなくたって、俺に言えば良かったじゃん」 「・・・・・・どうして」  ボロボロの顔でつの口をしても、全然効果が無い。 頭を撫でてやりながら、言葉を紡いでいく。 「愚痴ぐらい、いくらでも聞いてやれたじゃん。 お前、隣に住んでた時、さんざん愚痴聞いてやってただろ?」 「・・・・覚えてないもん」 「嘘つけ」  それまでと違う雰囲気に染めあがった凛の頬に指を這わせる。 「テストの点が悪くて親に怒られたとか。 テレビ見る時間が減らされたとか」 「な!テストの点は違うでしょ? それは浩之じゃん!!」 「どっちでも良いよ、そんなん。  でも、お前も俺も、そうやって来ただろ?」  俺たちは子供で、自分で世界を変えられない。  世界はいつだって思うように行かなくて、泣いたり喚いたりしたりしても、何も変わってはくれない。 「誰にも気づかれず泣いてるより、一緒に悩んでくれる奴がいた方が、楽だろう?」  名前の通り、凛然とした眼差しを向けてくる。  泣いているせいで、充血してしまっているけれど。。  どこまでも、まっすぐな瞳。 「・・・・ばか」  それは、どんな意味がこめられていたのだろう。  その声は、どこか甘い。
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