8/11
前へ
/39ページ
次へ
「それで、お前、文系なの?理系なの?」 「は?」 「お前の手紙のせいで、俺んなかで消化不良なこと沢山あるんだよ。  それから、俺の体調聞いてくんのは、まあ礼儀として。  自分が元気かどうかくらい書けよ。  あと、時候の挨拶とか、拝啓、敬具とかいらねぇから!  ったく、同い年だってのに、そんな気ぃつかって書いてくるなよな」 「え、あ、はい」 「バスケもやめたって言ってたけど、あれだって、本当は後悔してんだろ?」 「・・・・・うん」  凛の母親は、看護師だ。  夜勤があったり、仕事内容がハードらしく、家のことは昔から凛が手伝ていたのは知っていた。  引っ越して、どの段階で父親が出て行ったのかは分からない。  でも、気ぃつかいの凛のことだから、部活に入らなかったのはそれも原因の一つだろう。  母親が出来ない分、代わりに家のことをやろうと決意したのだ。  なんでもかんでも我慢して、全部飲み込んできた凛。  手紙に書いてくることは、サラリとした表面だけ。  本当は、もっと言いたいこともあっただろうに、それも全部我慢して。  文章に書いたって、それが本当になるわけじゃないのに・・・。 「・・・・うぅ、おばあちゃん、浩之がいじめる~」 「おま、っ、いくら部屋に戻ってるからって、人聞きの悪いこと言うなよ!」 「だって。・・・・・こんなに泣いたの久しぶりだもん。  浩之が泣かせたんだ~」 「・・・・・あ~~~~。 分かったから、泣け泣け。 俺が泣かせてるってことにして、思う存分泣いとけ」  泣き止まない凛と尻目に、ずずっと味噌汁を啜る。  泣きたいなら泣けばいい。  人様の幸せを涙を堪えているよりは、その方がずっと高校生らしい。 「あ~~。味噌汁が上手い」 「それ、作ったの私」 「え?ばあちゃんじゃねぇの!?」  そうして、寒くて、温かくて、賑やかな夜はふけていった。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加