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母親は仕事で早くても9時まで帰ってこない。
父親はさらに遅くて11時。
共働きで、誰もいない家に帰ってきて、最初にポストを覗くのが俺の日課だった。
「…俺あて?」
藤色の封筒に、どこかの山の風景が描かれた記念切手が貼られていた。
封筒をひっくり返してみると、そこには 少し前まで見慣れていた、女らしい文字。
勿論、ペーパーナイフなど持ち合わせていない。
逸る思いのまま、封筒を破いた。
ー
拝啓
早いもので、もう師走となりましたが、いかがお過ごしですか
こんなに長い間 手紙を出さないでいたのは 初めてですね。
受験生だからって理由もあったけれど、
実は、私の両親が離婚しました。
私も母も、母の実家で暮らしています。
色々あったけど、今は大丈夫。
浩之が元気でいてくれれば、私も頑張れる気がするから・・・・・
ー
それからは、引越し先は田舎で、雪が深く積もっている話といった、いつもの文書が続いていた。
「・・・・・なにが、元気でいてくれれば、だよ!」
急いで封を破ったせいで、綺麗な藤色の封筒はビリビリで。
更に、俺が握りしめたせいで、ぐちゃぐちゃだった。
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