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 ピピッピッピッピッ。  目覚まし時計の音はなんて剣呑(けんのん)なのだろうか。  そう思ったりして、 「ん――」  ぐっ、と髪をかき分けながら背中を伸ばす。目覚まし時計を手にとると、午前五時五十分。いつもより三十分以上の早起きだ。  まあ、それも、ぼくがその時間に起きようと思ったからである。別に、今日が特別誕生日とかいうわけではなく、勿論、《早起き記念日》でもない。  ――早起きしたかったから、それだけで。  布団から起き上がった、目の前の鏡には飄々飄然(ひょうひょうひょうぜん)なぼくがうつる。高校2年生のぼくは、今日、7月21日。その日に早く学校にいかなければならない。近い言葉でいうと、使命感に似た、神秘性と英雄性を求めての“冒険”だ。  “冒険は良い。”  男の浪漫(ろまん)を擽(くすぐ)らせる。自然と鏡にうつるぼくの口角も上がっていた。  にやにやしてみる。鏡にはにやにやしたぼくがうつった。  《まだ、ぼくの世界は正常だ》
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