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俺は抱きしめながら泣いていた。
こんな下手くそなお雛様を渡したんだぞ?
昨日あれだけ冷たく突き放したんだぞ?
俺はずっとお前の事を憎んでいたんだぞ?
「お父さん泣いてるの?」
そんな俺にお前は、
ありがとうと言ってくれた。
俺は今完全に分かった。あまりにも遅すぎるけど。
奏は愛菜の命を奪った悪魔の子なんかじゃない。
奏は……
愛菜が残してくれた最高の宝物だ。
そんな宝物を憎んでいた俺は最低だ。
でも、気づけてよかった。
だから、奏に言っておこう。
「奏」
「ん?」
「こちらこそありがとう」
「?」
「そうだ。今日はひな祭りだし、夜はちらし寿司にしよう」
「ほんと?やった!私ちらし寿司大好き!」
俺の中にあった、奏に対する黒い感情はいつの間にか消えていた。
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