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憎い。奏が憎い。
奏とは自分の娘の事だ。歳は六歳になるかならないかくらいだろう。
俺……鈴木亮太は30歳の普通のサラリーマンだ。
奏が生まれて数日後、俺に衝撃的な事件が起こった。
俺の妻……愛菜が死んだ。
愛菜の死因は直後の出産らしい。
つまり愛菜は自分の命と引き換えに奏を地上に生み出したのだ。聞こえをよくすればだが。
愛菜が命懸けで産んでくれた娘、
本来なら死んだ妻の分まで愛情を注げばいいのだろう。
だが、俺は違った。
この娘が自分の最愛の妻を奪った悪魔の子にしか見えなかった。
だからといって、世間で問題になってる児童虐待や無視はしていない。
ただ……この娘には何も与えていなかった。
愛情も思い出もなにも……
それくらい奏が憎かった。
そして俺はそんな罪のない娘を憎む自分自身も憎んでいた。
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