ひな祭り

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そんなある日、奏が俺に近づいて元気よくこんな事を言ってきた。 「お父さん! 明日なんの日か分かる?」 「…………さあ?」 俺はわざと素っ気なく答えた。ホントは何の日か分かっているはずなのに。 奏は少し悲しそうな顔をしてこちらを見つめてくる。 やめろ。そんな目で俺を見ないでくれ。 俺は一刻も早くこの娘を自分の部屋から出したかった。 「ちょっと仕事で疲れているんだ。休ませてくれないか?」 それを素直に聞いた奏は軽く頷いて部屋から出ていった。 ……情けない。俺はあんな言い訳をする必要はないはずだ。 分かってるよ。今日は3月3日、ひな祭りの日なんだろ? 多分奏は、父親である俺といっしょにそれを祝ってほしかったんだろう? 正直な気持ち、俺も奏の事を祝ってやりたい。自分の娘だし。 でも……まだあの娘に対する憎しみが消えない。消せない。 「この黒い感じ……どうすればいいんだ?」 俺は考えたがいい方法が思いつかず、その日はそのまま寝床についた。
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