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コツ、コツ、コツ。
無駄に広い廊下に、無骨な軍人用のブーツの音が響く。
軍人になってから15年、周囲の気配を窺うのがすっかり癖になった。
時刻は午前8時25分。
定例会議のちょうど5分前。時間にうるさいあいつらのためにわざわざ早めに来てやった。
時間なんて間に合えば良いものを、面倒くさい。
コンコン。
ノックは2回、中の返事も待たずに入れば、もう既に全員が集まっていた。
何だ、こんなに早く来たのに全員集まっていたのか。
…なんだか負けた気分だ、くそ。
「…よし、全員集まっているな。レティーシア・ヴィルカントただいま参った。これより今から定例会議を始める。」
…ん?女っぽい名前だと?
何を言っている、私はれっきとした女だ。
まあ話し方は長く軍にいたからな、そういうものだと思え。
うむ、レティーシアでは長いからな、レティとでも呼んでくれ。
「では第1部隊から第10部隊まで何か問題や報告等あったら言っていけ。」
「…自分の第3部隊では先日の魔獣討伐において5名が重体、8名が軽症。命に別条は無いとの事なので、心配はありませんが暫くは出る事が出来ません。」
「よし分かった、御苦労。他に報告は?」
第3部隊は主に対魔獣戦におけるエキスパート集団だ。
故に最も魔獣討伐の仕事が多く、出撃が多い。
第3部隊隊長、リオン・エンゲージは中でも突出した戦闘力を有する。
足を組みながら見渡せば、1人の男と目が合った。
途端、目つきを鋭くして睨みつけてくる。
そんな分かりやすい反応をされてみろ、もっと嫌がらせをしたくなるだろ?
フン、性格が悪いのなんて知ったことか。
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