日常

2/6
前へ
/11ページ
次へ
コツ、コツ、コツ。 無駄に広い廊下に、無骨な軍人用のブーツの音が響く。 軍人になってから15年、周囲の気配を窺うのがすっかり癖になった。 時刻は午前8時25分。 定例会議のちょうど5分前。時間にうるさいあいつらのためにわざわざ早めに来てやった。 時間なんて間に合えば良いものを、面倒くさい。 コンコン。 ノックは2回、中の返事も待たずに入れば、もう既に全員が集まっていた。 何だ、こんなに早く来たのに全員集まっていたのか。 …なんだか負けた気分だ、くそ。 「…よし、全員集まっているな。レティーシア・ヴィルカントただいま参った。これより今から定例会議を始める。」 …ん?女っぽい名前だと? 何を言っている、私はれっきとした女だ。 まあ話し方は長く軍にいたからな、そういうものだと思え。 うむ、レティーシアでは長いからな、レティとでも呼んでくれ。 「では第1部隊から第10部隊まで何か問題や報告等あったら言っていけ。」 「…自分の第3部隊では先日の魔獣討伐において5名が重体、8名が軽症。命に別条は無いとの事なので、心配はありませんが暫くは出る事が出来ません。」 「よし分かった、御苦労。他に報告は?」 第3部隊は主に対魔獣戦におけるエキスパート集団だ。 故に最も魔獣討伐の仕事が多く、出撃が多い。 第3部隊隊長、リオン・エンゲージは中でも突出した戦闘力を有する。 足を組みながら見渡せば、1人の男と目が合った。 途端、目つきを鋭くして睨みつけてくる。 そんな分かりやすい反応をされてみろ、もっと嫌がらせをしたくなるだろ? フン、性格が悪いのなんて知ったことか。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加