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彼の勘はいい。だが、
ドゴッ
その剣をビンセントは難なく避け、ブレッドの腹にけりを食らわせた。ブレッドが剣を落としひざをついて咳き込む音が聞こえる。
ビンセントはその剣で手のロープを切った。後ろ手のせいもあって、ロープと一緒に手も切り裂いてしまったが、今は気にしている暇はない。
「リーク!」
ビンセントはその名を叫びながらライナを自由にし、走り出す。
煙で姿は見えないが、リークが自分の足元を走っている気配をビンセントは感じた。
ビンセントはすでに準備しておいた魔術をリークにかける。
白い煙の領域を抜けたとき、リークはまた少年の姿にきちんと変わっていた。
「リーク。」
ビンセントの呼びかけにリークはうなずく。この姿であるときはビンセントがリークの名を呼ぶだけで、ビンセントが彼に何をしてほしいのかが伝わる。
リークの背から短い金糸を抜く。彼の背にまた白い翼が現れる。そのあとリークはライナの真後ろを走った。
「待て!」
後ろからは王国政府の者たちがあわてて追いかけてきている。
ビンセントは走りながら金糸で大きな扇子を二つ作り出した。一度扇子を後ろに向けて大きく振る。強風が巻き起こり、追っ手の邪魔をした。
ビンセントたちはそのまま全速力でまっすぐ山を駆け抜け、
「あっ!」
ライナがあわてて立ち止まろうとしたが、後ろにいたリークが彼の肩をしっかりつかみ、地面を蹴った。ビンセントも途切れた地面の端を思い切り踏み込んだ。
ディランは逃げるビンセントたちを追いかけた。捕まえたいわけじゃない。逃げきる姿が見たいのだ。
そのとき山の木々で暗いはずのその先から、まばゆい光が木々の幹の隙間からあふれこんでいるのが見えた。兵士たちは減速
するが、ビンセントたちは迷わずその先を踏み越えた。
ディランとジェームズ、ドリル、それに苦しそうなブレッドがゆっくりとその山の端に立ち、ビンセントたちを見送った。
そこは高い高い、崖だった。
リークの翼は太陽を反射し、まばゆい光を放ちながら力強く羽ばたく。ビンセントは大きな扇子を両手に一つずつ持ち、器用に風を操って空を飛んでいた。
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