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ディランの答えに不服そうな二人。こんな二人を満足させる、ディランにとっても都合のいい話が一つある。
「そういえば、この北地にはクレア姉様が好きなお菓子がありまして、日持ちがするものなので大量に買ってこいと言われているのですが・・」
そこまで言えば十分だ。
「それは何だ?俺がいくらでも買っていってやるよ。」
「何を言っているのですか、私が買っていきましょう。」
この二人は簡単に食いついた。
「それは、助かります。二人のことはクレア姉様にきちんと伝えますよ。」
ドリルはすぐに報告文を書き上げ都心にいる上司に魔術で飛ばす。
そしてドリルとブレッドは勢い込んで山を降りていった。ジェームズは楽しそうにディランの横を歩いている。
「ジェームズは行かなくてもよろしいのですか?」
「ん?そりゃ、俺は俺自身だけで十分だ。」
ディランは自分の質問に激しく後悔した。クレア姉様は長女が王妃に嫁いだ大魔術師家・ワトソン家の次男とすでに結婚している。ドリルとブレッドがクレア姉様に気に入られようとする一つの理由もそれだ。
一方、下流階級のジェームズは二人と違った取り入り方をする。特にちょうどクリントと同世代の上流階級の人妻に、そのクリント似の美しい顔を利用して自分の虜にして、自分の地位を確立していた。これが彼が『人妻キラー』と呼ばれるゆえんである。彼はこうすることで何とか階級身分に留まり、身の安全を確保していた。
「おい、何を暗くなってんだ?楽しく行こうぜ。」
ジェームズの声にディランは頭を振って、今回の任務のことに頭を切り替える。
今回の任務に来てよかった。
クレア姉様にお土産を頼まれ、ドリルは口うるさく、ブレッドは逆に無言の圧力が嫌だった。唯一の救いはジェームズが一緒だということだけだったが、彼等にクレア姉様への土産を買ってもらうことに成功した。あの娘の所在もつかめ、そして何よりリークに会えた。
クスッ
先ほどこらえた笑みが漏れてしまう。
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