6.魔界

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 彼なら、女であることを明かしても、ディランをリディアとは見ないのではないか。私を私として愛してくれるのではないか。そんな期待に胸が膨らむ。  でも、もし期待が裏切られたら?  ディランが男を装っているからこそ、ディランとリディアを区別してくれているのだとしたら?  この話についてはもう考えたくなくて、 「そんなことより、私たちもラミーニャに行きましょう。」 「だめよ。」  話題を無理やり変え、ディランが立ち上がろうとするのをみんなが止めた。 「その体でラミーニャに行ってどうするんだ?」 「ジュリーもおわかりでしょう。ギュールではビンセントを守りぬけません。」  ジュリーはディランから目をそらせた。ギュールもあの年であれだけできれば十分なのだけど、ガイラスより弱くては話にならない。  ギュールのほかにもラミーニャへ行く理由はある。たぶん門の傍で隠れているであろうライナとシンシアを欲深い人々から守ってあげなくてはならない。  今、魔術は使いたくないけれど、最高峰の守りを教わったから。こんなときジェームズがいてくれたら、弱くても心強いのに。何であのとき湖に捨ててしまったのだろう。話せば絶対に味方になってくれたのに。 「私も一応クリントさんの弟子です。二年前は行けませんでしたが、今回は行きます。」 「・・・そっか、」  しばらくの沈黙の後にジュリーが言った。 「そんじゃ、あんたもいろいろと見つかったらやばいだろ。」  ジュリーがむすっとした表情で、押入れをがさごそと探し始める。なんだか嫌な予感がした。 「あった、あった。」  見覚えのある大きな箱を取り出す。あれはミシェルダ様がディランに贈った服。 「行くって言うなら、これ着てけ。」  ディランは固まった。  この服でガイラスに出会ったらどうしよう。  でも、それもいいかもしれない。  ラミーニャの決着のときに、自分の心にも決着を付けよう。
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