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ビンセントもシンシアもギュールまでも驚いていた。ただ、シンシアの驚きの表情の中にはさびしさもまぎれているような気がした。
「見張りのほうは大丈夫なのですか?」
ビンセントが驚きから立ち直って尋ねる。
「ああ。クリントの屋敷の侵入を命令されたときに、奴らが俺にかけていた目印の魔術を外させて、見張ってた奴らはつぶして隠しておいたから、平気だ。」
「黒魔術以外の危険って何だ?」
ライナも思い切ってガイラスに質問する。ガイラスはきちんと答えてくれた。
「ディランをジュリーが連れ出した後だったからよかったんだが、誰かがディランがいた俺ん家の別邸に火をつけたんだ。魔術のかかった火でなかなか消えなくて、別邸は全焼した。」
「ミシェルダさんたちは?」
「親父がディランを別邸に置くと決めたときに、別邸にいた全員を本邸に移していた。人以外にも高価な物を全部な。親父はこうなることをわかっていたらしい。」
ガイラスはそう言いながら立ち上がり、
「質問はディランの黒魔術を取り除いてからでもいいだろ。とにかく・・っ!」
ガイラスが言葉を切ってある一方を見る。ビンセントもギュールも同じほうを見ている。
「何が平気だったのですか?」
ビンセントが嫌味を言う。
彼らが見ている方向から、森の木の間をすばやく抜けて武術師たちが迫ってきていた。
だがすでにビンセントの魔方陣が出来上がっており、ビンセントが魔方陣を発動させようとしたとき、誰かがライナたちの元に投げ飛ばされてきた。
魔方陣の金の光に照らされてその場に横たわる女。そこにはぼろぼろの姿のジュリーがいた。
ビンセントとガイラスはとっさに魔方陣から抜けて、ビンセントは素早く魔方陣を発動させる。ジュリーがこのような形でここにいるということはディランもきっとここにいる。とにかくライナたちだけを逃がして、私はここにとどまらなければいけない。しかし、
「え?何で?」
一番逃がしたかったライナにはうまく魔方陣が働かず、ギュールとシンシアが姿を消したのに、ライナだけがそこにいた。ビンセントはとりあえずもう一つ魔方陣を作ろうとするが、
「ビンセント、こいつがどうなってもいいのか?」
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