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少年が目を覚ましたのはもう日も沈み、夕食をとっているときだった。大きめに結界を張っているので、ビンセントは何も気にせず焚き火を囲んでいる。
「気分はいかがですか?」
ビンセントの問いに少年は勢いよく起き上がり、ビンセントをにらみつける。
「私はビンセントといいます。こちらにいるのはリークです。」
リークは必死になって自分の分の食事を食べていた。
「・・それを返せ。」
少年はビンセントの腰に提がっている自分の短剣を指して、ぶっきらぼうにそうはき捨てる。警戒で瞳がぎらぎらと光っている。
「ええ。ですが、まだ傷が完治していませんので落ち着いて。」
「触るな!いっ・・」
ビンセントが少年を座らせようとした手を少年は払いのける。しかしその反動によって感じた痛みで彼は腕を押さえた。
ビンセントは傷に治癒魔術をかけてはいるが、少年があまり腕を動かさないように痛みは止めていない。
「毒は治癒魔術でも治るのに時間がかかりますのでおとなしくしていてください。」
少年はすでに手当てが施されている腕を見つめる。
「・・ありがとう。」
少年は顔を赤らめながらうつむきがちにつぶやく。
「ところで、あなたはこれからどこへ行かれるおつもりですか?」
「何でそんなこと聞くんだ?」
「あなたの傷のことや、あなたを追っていた政府の者たちのことが気になります。このままあなた一人では、すぐに捕まってしまうでしょう。行く当てがないのであれば私たちと一緒に来ませんか?」
少年はビンセントの言葉に困ったような表情を見せる。
「もし、行く当てがあるのならば私たちがついていきます。」
・・クス・・
ビンセントは笑わせるつもりはなかったのだが、少年は笑い始めてしまった。その笑顔は本当に愛らしい少女のようである。
「結局、一緒に行くんじゃん。」
ビンセントには笑いのポイントがいまいちよくわからないが、結果的に少年が自分に打ち解けてくれたようでほっとした。
「リークも、リークも仲間に入れて。」
食べ終わったリークがビンセントに抱きついてきた。
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