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「リーク、口の周りが汚れていますよ。」
ビンセントが口の周りを拭いてやると、リークは少年の怪我をしていないほうの腕を取った。
「リークはね、リークって言うの。リークとビンセントは仲良しなの。」
「あ、ぼくはライナっていうんだ。」
「ライナもリークと仲良しになるの。」
リークがそのままライナに抱きつこうとするのをビンセントは止めた。さすがに初対面者に抱きつかせてはならない。それにライナのほうもリークに対して少々おびえている節があった。そのうち慣れてくれるとは思うが。
「だけど、ぼくなんかといたらあんたらも狙われるんじゃないのか。」
「元々狙われていますので、心配なさらなくても大丈夫ですよ。」
「べ、別に心配なんかしてねーよ。」
顔を真っ赤にしてはき捨てる。
「それで、お前らはどこに行くつもりなんだ。」
ぶっきらぼうなその口調。照れ隠しがばればれである。
「まずはこの近くの町に行こうと思います。」
「あそこには政府のやつらがたくさんいる。」
「そうですか。・・では、仕方ありませんので、町とは反対に行くとして、この山を越えましょうか。」
ライナはこくりとうなずき、ビンセントが差し出した夕食を素直に受け取って食べた。新しい仲間にはしゃぎ疲れたリークはビンセントのひざを枕に眠っている。ビンセントはここでラミーニャの娘の情報を持つ者と接触することをあきらめて、後々都で政府から情報を横取りすることにした。
リークの頭をなでているビンセントをライナはいぶかしげに見つめて、気まずそうに話しかけてきた。
「その、リークとはどんな関係なんだ?」
ビンセントはリークの頭をなでながら少し考えて、
「知り合いから預かった子なのですが、親子・・みたいなものですかね。幼いのにいきなり親と切り離されてしまった彼を私が育てているようなものです。」
ビンセントはそうとだけ答える。これ以上深いところはまだライナには言えない。
ライナは少々不満そうではあったが、それ以上は何も聞かずに眠ってくれた。
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