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次の日は朝から山を登り続け、昼時になったときだった。
「見つけたぞ!」
低い声が森の中に響いた。
もう山を降りていると思っていたのだが、どうやら執念深く探していたようだ。それほどまでしてライナを追っている理由は何なのだろう。
ライナが声がしたほうに背を向けて一気に走り出したので、ビンセントとリークもその後についていった。
しかし、その先にも政府の者がいてライナはとっさに短剣を構えて、そのまま突っ込んでいく。
あんなにも華奢で、怪我もしている彼が政府の男に敵うとは思えない。また怪我をする前に何とかしてあげなくては。
「リーク!」
ビンセントが呼ぶとリークはすぐに隣に来て、ビンセントは走りながらリークの背中から短めの金糸を取り出す。その瞬間リークの背中から、白く、毛のないごつごつした翼が現れた。
リークはそのまま翼を使い、一気に加速してライナを追い越し、男を殴り飛ばす。
ライナはリークの力強さに驚いたようで呆然としていた。リークと話したことがある人間なら、誰もがリークがこんなにも力強いとは思わないだろう。
リークが暴れている間にビンセントはやや強力な魔術の呪文を唱え、金糸を迫り来ていた後ろにいる男たちに投げた。
「二人とも行きますよ。」
ライナとリークをつれて急いでその場を離れる。
後ろから激しい爆発音が聞こえた。魔術はうまくいったようだが、これでどれくらい足止めできるかはわからない。
「っ!」
その二人の男は爆発時の煙を引き連れて、少し金色に光りながらビンセントたちの前に現れた。一人は大きな剣を、もう一人は細長い棒を握っている。昨日見た男だ。その姿や雰囲気から彼等が訓練された武術師であることがわかる。その上彼等には魔術がかけられて強化されている。
これは武術師ではないリーク一人では敵わない。ライナもいるので無茶もできない。
とりあえず隙をうかがうために、ビンセントはリークに魔術をかけて翼を消してから、手を口から遠ざけた。
「なかなか利口じゃないか。お前のほうはどうする?」
武術師はライナのほうに剣先を向けた。ライナはビンセントの行動に戸惑いながらも短剣を構え続けていた。
リークはいつものとおりビンセントには逆らわず、ビンセントの体にぴとりと自分の体をくっつけてじっとしている。
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