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じっと短剣を構えて動かないライナのほうに金糸がまっすぐ草木の隙間を抜けて飛んできた。
助けようとしたビンセントの前に武術師が現れて邪魔をする。魔術が命中したライナはその場に崩れ落ち、棒使いが慌ててライナを支えた。
「おいおい、まだガキだぞ。もっと優しくできないのか?」
「そもそも彼が逃げるからいけないのです。」
棒使いの言葉にそんな満足そうな返事をしながら、煙の向こうから二人の男が現れる。そのうちの一人、気乗りしていない感じの、きれいな顔をした魔術師がビンセントに気づいた。
「お久しぶりです、ディラン。」
「っ?!」
ディランはビンセントがいることに相当驚き戸惑っている。武術師の方はビンセントのことを知らず、困った様子だ。
「ディラン!」
リークはディランの姿を見るなりビンセントから離れて彼に抱きついた。ディランはリークの体を支えきれず地面に倒れる。そのままリークはディランの頬を猫か犬のようになめた。
「リーク、くすぐったいです。止めてください。」
ディランはリークを離そうとするが、その顔や声は少しうれしそうだ。リークもうれしそうにぺろぺろなめ続ける。
「リーク、止めなさい。」
ビンセントが声をかけるがリークは言うことを聞かない。
そのうちに兵士たちが集まり、先ほどディランとともに煙から出てきたもう一人の魔術師の命令でライナとビンセント、リークは縛られて座らされた。
「まさかこいつがあのビンセント・クワローニーだとわな。はじめまして、俺は棒使いのジェームズだ。」
「初めまして、あなたはディランの相方ですか?」
「何を言っているのですか?こんな治癒魔術だけの魔術師が武術師など持ちませんし、この棒使いを武術師にしたら足手まといでしかない。」
覗きこむように自分を見てくるジェームズ。にっこり笑顔で気がよさそうだ。そんな彼を押しのけて、あの偉そうな魔術師がビンセントの問いに答えた。たぶんこの魔術師がこの集団のリーダーであろう。
「私はドリル。そしてあそこの剣士がブレッドといい、私の相棒です。大魔術師ビンセント、以後お見知りおきを。」
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