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カタカタとキーボードを叩く音が薄暗い部屋にこだまする。
水色のカーテンから覗く朝日だけが、その日の始まりを告げていた。
「んー…、そろそろ部屋から出ないとかー」
ひたすらキーボードを叩いていた彼女は、椅子から立ち上がり背筋を伸ばす。
ボキッゴキッと有り得ない音をたてる背骨が、彼女が椅子に座っていた時間を物語っていた。
「千歳に怒られるかなー…」
栄養補助食品の箱を、着ていた白衣のポケットに突っ込み部屋の扉のドアノブに手を伸ばす。
彼女がこの部屋から出るのは約三ヶ月ぶりだ。
「ふぅ…、さて、行きますか」
ドアノブを回し、扉を開く。
朝特有の白銀の光が室内を明るく照らした。
が、それも一瞬の事で、再び閉められた扉によって、朝日は部屋から閉め出される。
彼女の姿はそこにはもうなく、パソコンの画面だけが薄暗い室内を淡く照らしていた。
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