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やっと家に着き、玄関のドアを開けて下駄箱に鞄を置くと、母さんが泣きそうな…っつーかもう泣いた顔で突然迫って来た。
何事かと驚き焦って居た俺を見兼ね、何時もは帰りの遅い親父が居間から出て来てスッと一通の手紙を差し出して来た。
其の表情は暗く、良い報せでは無い事だけは悟れた。
俺は何が何だか解らないまま、取り敢えず不安な心境のまま手紙に目を通し、愕然とした。
一瀬の皆様
ご無沙汰して居ります。
皆様元気でお過ごしでしたでしょうか?
私は元気にして居ます。
今回、身内に不幸があった事をお報せさせて頂きます。
実は、娘の律子が交通事故に合い、亡くなりました。
葬儀は身内のみでしめやかに執り行いました。
ずっとご連絡が出来ず申し訳御座いません。
今迄律子を娘の様に可愛がって下さり有り難う御座いました。
落ち着きましたら又ご連絡させて頂きます。
悠香
何だよ此れ。
何の冗談だよ…悪ふざけにも程があんだろ。
頭の中は一瞬で真っ白になった。
そして一瞬でぐちゃぐちゃになった。
「嘘だろ…。」
だってさっき、たった今リコに会ったじゃないか。
相変わらず馬鹿みたいな、元気で…。
千裕だって、彼奴だってリコと話してた。
死んでる何て有り得無いだろ。
「悠香さんと連絡が取れないんだ。携帯は繋がらないし、実家もずっと留守電のままで、詳細が解らないんだ…。」
「こんなもん…嘘に決まってんだろっ、有り得無ぇよっ!!」
「俺も信じたくは無い。でも、此の字は確かに悠香さんの…」
「冗談だろ?なぁ!!リコが、んな事、有り得無ぇよ…。」
だって笑ってたじゃねぇか。
何時もと、何も変わらない様に。
彼処に居たんだ。
嘘だ、何かの間違いか悪戯だ。
本当だっつーならさっき会った彼奴は誰だよ。
手紙は何時の間にか足元に落ちていた。
見覚えの有る字、確かに叔母さんの字だった。
其れにおばさんはこんな馬鹿げた冗談を云う人でも無かった。
交通事故?
何でだよ。
何でリコがそんな簡単に死ぬんだだよ。
殺したって死にそうに無い頑丈な奴が、交通事故?
馬鹿げてる。
頭可笑しくなりそうだ…。
落ち着こう。
兎に角冷静に考えるんだ。
母さんは床に崩れたまま啜り泣いて居た。
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