俺の結論。

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「引っ越し先…リコの引っ越し先って此処と大した変わり無いんだったよな?」 「え、あぁ…小さな田舎町だって云ってたな。」 親父も多分俺と同じで必死に落ち着こうとして居るんだろう。 仕切りに頭を掻いては何か考え事をして居た。 「だったら大きな病院も一つしか無いよな?」 「恐らく…調べて聞いてみるか。」 母さんを頼む、そう云って親父は電話帳を探しに居間に戻った。 床に落ちた手紙を拾い上げ、もう一度目を通してみた。 やっぱり信じらんねぇ。 手紙を元の形に折り畳み、封筒に戻した。 「母さん、立てる?」 返事一つせず、動きもしなかった。 何時までも泣きながら時々咳き込む姿に酷くやるせない気持ちになった。 母さんからしてみれば娘を失ったも同然な筈だ。 「母さん、しっかりしろよ…泣いてたってどう仕様も無ぇんだから。取り敢えず部屋に戻ろう。」 母さんの体を半ば無理矢理引き起こし、肩を支えて居間へ戻った。 母さんの体は冷たく感じた。 小さくごめんね、と呟くと、俺の腕を力無く握り締めた。 俺は其の手を強く握り返した。 静かにソファーに座らせ、未だ電話帳を調べて居る親父と一緒に引っ越し先に在る病院を探した。 親父の手が震えて居る。 「八幡町…此処だよな、八幡総合病院。」 「…あぁ、多分。」 小さな個人病院も幾つか有ったけど、交通事故なら大きな病院に運ばれるだろう。 ニュース、毎日見てたけどリコの事何かやって居たのは見た事無い。 全ての事故がニュースになるワケじゃ無いんだろうか。 「何て、聞けば良いんだ?」 「んな事俺に聞くなよ…。」 「事故って、何時だ?」 「知るかよ。」 「八幡町で…いや、そちらに雨萱律子と云う子は入院して居ますか、か?」 「入院じゃねぇだろ…あぁっ、貸せよ!俺が電話する!!」 オロオロして居る親父から受話器を取り上げ、ダイヤルを回した。 親父がこんな情けない姿を見せたのは初めてだ。 何時もどっしり構えて居て、冷静で豪快だった。 動転して居るからだろう、何時もの親父の面影は無かった。 こんな時だ、当たり前と云えば当たり前か…。
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