各々

俺の結論。

「…なぁ、普通病院じゃなくて警察じゃないか？」

「はぁ？何だよ今更…あ、もしもし、一寸聞きたい事が有るんですが…。」

俺の声は緊張の余り少し震えて居た。

「そちらの病院に雨萱律子と云う子が運ばれて来たと思うんですが…いや、身内では無いんですが、幼馴染みっつーか、近所に住んでた者で…はい、はい…。」

一寸待って下さいね、今調べます。
電話の応対をしてくれて居るオバサンの声は優しい声をして居た。
気が遠くなりそうだ。
心の何処かで未だ嘘だと期待して居た。
脈がどんどん速くなる、必死に静めようとすればする程速くなる、奇妙な感覚に襲われる。
祈る様な気持ちで受話器を握り締めた。
受話器から聴こえて来るエリーゼのためにが気持ち悪い。
目眩すら感じる。

お待たせ致しました。

突然の声に思わず体が強張った。
更に脈が速くなる。
落ち着け、落ち着け、
念じながら返事をした俺の声は裏返って居た。

雨萱律子さんは12日前に此方に運ばれて来ましたが、残念ながら手の施しようが無く、着いて間も無く息を引き取られました。
歩行中に車に引かれた様ですが…事故の詳細は……

途中から何も聞こえなくなって居た。
頭の中は真っ白だった。
嘘だ。
親父が受話器を取り上げ、捲し立てる様に何か云って居たが、すぐに諦め受話器を戻した。

「…律子ちゃんは、15日の夕方に息を引き取ったそうだ。」

「……。」

母さんは大声を上げて泣きじゃくった。
親父も其の場に膝を付いて静かに泣いて居た。
まるで悪夢を見て居る様だ。
さっき迄あんなに元気に笑って居た奴が、もう生きては居ない。
存在しない。
もう、居ない、会えない？
嘘だろ…。