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「所で何で私を探してたの?」
答えに詰まった。
何で?
そう云われても、何でだっけ?
自然と、気が付いたら探してて…。
何か理由が有った筈なのに忘れてしまった。
「解んねぇ、忘れた。」
「何だよ~、涙のお別れでも云いに来てくれたのか何て一寸期待してたのにー。」
「お前、本当に死んだのか?」
「一応ね。」
「何で触れんだよ。」
「其れを私に聞くなよ。」
「つーか成仏しろよ。」
「仕方が解んないんだよ。」
バカだ。
此れじゃあ生きてんだか死んでんだか解んねぇじゃねぇかよ。
「おばさん、大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。もうケロッとしてた。毎日仏壇に手を合わせてくれてるし。」
「マジで何しに来たんだよ。」
「気付いたら此処に来てた。」
あぁ、やっぱり俺がリコの事考えてたからか?
俺って未練タラタラなのか?
心外だな。
「久し振りにリコって呼んでくれたね。」
「…あぁ。」
「有り難う。」
「何がだよ。」
「何と無く。」
「変な奴。」
「お互い様っしょ。」
リコはケラケラと笑った。
そんな変わらないリコを見て居る内に俺も気持ちが落ち着いて来た。
此れが本当に最後のお別れだ。
「ちゃんと成仏しろよ。」
「任しといてよ。天国っつー所に見学でも行って来るよ。」
「墓参り、行くから。」
「あ、手土産忘れないでよね。」
「母さんのハンバーグ持ってくよ。好きだったろ?」
「超好き。」
「…じゃあ、お別れだな。」
「そうだね。」
不思議な気分だ。
又何時かひょっこり出て来そうだし。
「おじさんとおばさんに宜しく伝えといてよ。」
「伝われば良いけどな。」
「じゃあね。」
「…おう。」
隣にはもうリコは居なかった。
成仏出来たんだろうか?
でもマジで何で触れたんだ?
幽霊=透けてるって単なる思い込みなのかもな…。
あー、疲れた。
親父と母さんに何て云おう?
元気だった…っつーのも可笑しい、よな。
成仏した、とか?
つーか此の状況で何話しても伝わんねぇよなぁ。
どう説明しよう…。
背中を擦り抜ける夜風が涼しかった。
辺りはもう真っ暗だ。
帰ろう。
立ち上がってズボンに付いた土を払って居た時、ふと一つ忘れて居た事を思い出した。
もう遅いけど…。
彼奴を一発殴んの、忘れてた。
-END-
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