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答えるまでに一秒も要しなかったかの様に即答だった。
思わず悲しくなってしまった。
昔は「リコちゃん。」て呼んでくれて、毎日の様に手を繋いで遊んで居たのに。
今では全く、大変面倒臭そうに相手…と云うか処理をして居る。
昔の恥ずかしい写真をバラ撒いてやろうか、と思う程憎らしい。
「おばさんにはちゃんと云って来てんのか?云って無ぇだろ?」
「残念、ちゃあんと許可取って来てるもんね。」
「何か嘘臭ぇな…。結局何しに来たんだよ?忘れ物か?」
「…まぁね。」
答えに詰まった。
忘れ物も探し物も無い。
序でに許可何て取って無い。
本当にぶらり旅だった。
転校先も此処も大した代わり映えの無い田舎町で、特に何が有るワケでも無い。
大きな書店やデパートも無い。
逝き掛けの爺さんがやっている本屋と小さいけれど唯一の貧相なデパート、オバチャン服に混じった微妙な若者向けの服屋、堅物の和菓子屋等、其の程度しか此処には無い。
強いて云うなら向こうには大手の中古本屋があるだけ幾分か都会だ。
此処は遊ぶ所も無く不便で、余程の理由が無い限り帰って来ないのが当たり前であろう。
だって、向こうは汽車で三十分も行けば大きな街が在るし。
私が帰って来た理由。
本当に一寸だけ、竜汰に会いたかったかもしれない。
「明日も授業あんだろ?さっさと忘れ物取って来いよ。あ、序でに家の母さんに顔出して行けよな。寂しがってたぜ。」
「うーん、時間あったら寄るよ。」
「何だよ、やっぱおばさんに云って来て無いんじゃねぇ…」
「リュウ!!」
彼の後ろから一寸険しい顔をした女の子が走って来た。
ずっと此の町で暮らして来たけど、私の知らない子だった。
何か、怒ってる様な顔をして居る。
私はスグに察知した。
彼女に違い無い。
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