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「剣斗」
「ん?」
私は会社帰りの桜並木で剣斗に聞いてみることにした。
「やっぱり嫌なんでしょ?」
「なにが?」
剣斗は、ただ黙って上を見上げ、桜の散る様をジッと見ている。
「だから……」
「沙胡」
剣斗はそう言って私の言葉を遮ると、徐に左手を差し出した。
訳は分からないが、とりあえず出された手をそっと握る。
なに?
私は剣斗の顔を覗き込み、ジッと次の言葉を待った。
剣斗が握る手の力が少し強くなり、私は小さく首を傾げた。
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