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入学式も無事に終え、片付けを手伝いながら氏政をあしらってればこっちに来る人物が。
「樹さん」
「おぉ、千。入学おめでとうな」
千が俺の隣まで来ると、「ありがとうございます」と頭を下げ、それから珍しく落ち着かなそうにしてる。
いつも冷静無表情な千が。
「どうした、千。そわそわして」
「あの……樹さん、どうですか、この制服。変じゃないですか?」
「制服?」
千をザッと見るが、俺と同じ制服だしどちらかと言えばお似合いだぞ、この男前め。
「似合ってるけど」
「!」
そう答えれば、千は嬉しそうに制服の襟を掴んだ。
え、何その仕草可愛い。
「良かった。樹さんと同じ制服をようやく着れたのに、変だったら、と思って。でも、良かったです。こうして樹さんと同じ制服、同じ校舎で学べて行けるんですね」
普段より抑揚がついた声色。
俺の後輩が可愛すぎてどうして良いのかサッパリである。
とりあえず頭か?
頭でも撫でれば良いのか?
制服と俺を見比べて、ご機嫌の千を見て、頭に伸ばした手を止めてふと思い出した。
「そうだ、千。お前のクラスに、村瀬って奴いないか?」
「村瀬……? いえ、いませんが。樹さんの血縁の方が?」
「あぁ、俺の弟だ。入学式が終わったら寮の荷ほどき頼まれてて……あいつ、何処に行ったんだ?」
「樹くん、弟くんならさっき体育館の外で見掛けたよ」
「そうか、でかしたストーカー」
「えへへへへ!!」
嬉しそうに喜ぶ氏政を無視し、千に軽く挨拶を済ませてから外に出れば、腕を組んだ勝史がドアに背中を預けてたからすぐ見付かった訳だ。
「勝史」
「遅いんだけど、いつまで待たす訳。樹の癖に」
「癖にって何だ、癖にって。片付け手伝いしてたんだって」
「へーあっそー、風紀委員長様は大変な訳だ。ふーん、弟よりも、手伝いの方が忙しい訳だ」
言葉に刺が有りすぎる。
「何だよ、荷ほどき手伝って欲しいんだろ?」
「……別に。後輩でも可愛がってれば良いだろ、バカ樹」
むくれたように顔を逸らす勝史に肩を落とすが、ここで勝史の言う通りにするともっと拗ねるしな。
仕方ない。
「わかったわかった、勝手に部屋の荷ほどき手伝ってやるから」
「好きにすれば」
あぁ、全く可愛げが消え失せた弟だこと。
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