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君を労りたい
体育祭も間近に迫った、と言う頃。
「くっ……!」
俺は、教室の机に臥せていた。
「村瀬、具合が悪いなら帰りなよ」
「熱がまた上がってきたんじゃないのか? ……熱いな」
田崎とサムが心配そうに顔を覗き込み、サムの手が額に触れてくる。
ひやりとして大変結構、だがな。
「馬鹿野郎……次は、体育で柔道だぞ……這ってでも行くに、決まってるだろ……!」
お館様の授業を休むなんて無理に決まってる、這うのが無理なら転がってでも行ってやるぞ。
と立ち上がるが熱でよろける俺を、サムが仕方無さげに抱き止めた。
事の発端はこうだ。
先日、南原からの突進で腰を痛めた俺は体育祭も近いから療養しようと決め込んでいたものの、「村瀬委員長、一階の窓が!」「村瀬様、蹴り飛ばしてください!」「弱ってる今がチャンス!」と色々問題と面倒が次から次へと俺の元へと持ち寄られ、風紀を取り締まるのに日々の追われてれば、昨日めでたく過労で高熱を出しぶっ倒れると言う結果となった。
高熱と腰の痛みも引かずコンディション最悪で、休むかと今日の授業を確認したが何と体育があったからな、熱ごときで休む訳にもいかず登校したと言う経緯に至る。
サムの肩を借りながら廊下に出れば、ちょうど隣の教室から出てきた奴の姿を見た瞬間にサムに肩を抱かれた。
おい。
「イッキ、もっと寄り添え。歩けないんだろ?」
「この体勢のが歩けない」
「抱っこが良いのか? 熱が出ると素直だな、もっと甘えても良いぜ」
「田崎、田崎通訳してくれ……!」
「和田くん、村瀬の熱が上がるからやめてあげよう」
サムの腹をゴスゴス殴っても鉄人には効かず、半泣きでオアシスに救いを求めれば、サムは舌打ちをしながら手を緩める。
と同時に肩をそっと後ろに引かれた。
「樹くん大丈夫?」
「氏政」
「はぁん! 熱っぽい表情で名前呼ばれてる!」
「飯生くんも、村瀬の熱が上がるから離してあげてくれるかな」
興奮した奴に冷めた表情を向けてれば、結局田崎に背中を支えられながら格技場に向かうことになる。
「……今日も、Sと合同体育かよ……」
「今日は榊原くんも居たよ」
「う……っ! いやしかし、お館様の授業を休む訳には……!」
「イッキの武田に対する好感度の高さは何なんだ」
英知に会いたくはないが、俺にはお館様が待ってると思えば頑張るしかないな。
しかし腰が痛い。
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