君を労りたい

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格技場に着き、のろのろと柔道着に着替え現れた俺を、お館様が心配げに駆け寄ってきた。 あ、俺、それだけでもう元気出た、今日も頑張る。 「大丈夫か、村瀬。お前、体調良くないなら早退しなさい」 「お、俺が……お館様の、授業を、休むなどと……」 「そんな立ってるのもやっとな奴に格闘技やらせると思うのか、単位はやるから今日は見学だ、良いな? 嫌だって言うなら落としてでも隣に置くぞ」 それも良いな……とぼんやりする頭で頷く俺を、「よし、いいこだ」と満足げに頷くお館様に頭を撫でられたぞ。 「パパン……!」 「よーし、お前ら整列しろー」 父性フラッシュを受け全力でにやける俺を放置したお館様はパンパンと手を叩きながら他の生徒を整列させる。 放置プレイで喜ぶのは氏政しか居ないと言うのに、と並ぼうとする俺、の腕をお館様ががしっと掴んだ。 「村瀬は、此処に居なさい」 「! いつでも、お館様の、傍に、居る……!」 といつもなら飛び付くはずだが、腰が痛くてコクコク頷くだけに留まる俺に、身構えてたらしいお館様は物足りなそうに眉を下げた、だと……!? 悶える俺の耳に「樹くん可愛いREC」と言う声とピロリーンと軽快な音が聞こえ、帯に手を回して外し奴の頭を叩くと携帯片手に前に倒れるストーカーは「鞭打ち!」とか興奮したように喜ぶのを無視した。 帯を締め直してる間に、いつの間にか授業が始まったらしく、腕を引っ張られ壁に寄りかかりながら座るお館様に隣をぽんぽんと叩かれる。 喜んで座れば、よしよしと頭を撫でられたんだが、公開甘やかしか? けしからん、最高かよ。 「む、村瀬くん……」 「南原」 お館様に撫でられるままで居た俺の元へ、わんこ、もとい南原が半泣きでやって来た。 そうか、Bも合同だったのか、気付かなくてすまなかったな。 と右手を差し出せば、南原はすぐに右手を乗せてきた。 よし。 「って、お手じゃねぇッス! 村瀬くん、体調良くねぇって、もしかしてあの時のせいッスか?」 「ん? ……いや、俺の、自己管理が出来てなかっただけだ、気にするなよ」 腰は痛いが大丈夫だ、と頷く俺を南原が半泣きから泣き寸前に表情を歪める。 「ううううう、村瀬くんが元気ないの寂しいッス!」 「病人の傍で騒がない。そう言うのは後にして、ちゃんと授業する」 とお館様が南原を叱るので、お館様の絶対的な味方の俺はそうだそうだと頷いた。 喋るのが怠くなってきた。
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