君を労りたい

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サムに残念なことに姫抱きで部屋まで運ばれると言う珍事にも、熱でツッコミを入れる気力がない俺を見、奴は「抵抗しないのか、萌えないな」とか抜かしてきた。 高熱の人間捕まえて何言ってるんだ、と思ったが、思いの外丁寧にベッドに運ばれたので許してやろう、俺は寛大だからな。 「イッキ、着替えられるか? 脱がしてやろうか」 「それくらいは出来る」 「チッ」 「少しは下心を優しさで包んで隠せよ……」 魂胆がストレート過ぎるサムに「静かに寝たい」と伝えれば、「じゃあ、授業でも出てノート取ってきてやる」と立ち上がった。 サムにしては気が利くな。 ピンポーンピンポーンピピピンポーン と、そこでチャイムが鳴る。しかも連打だ。 俺はこの連打を最近聞いた。 「何だ、喧しい」 「この鳴らし方は……勝史だ」 「お前の弟は常識が足りないのか」 「多分……俺限定でな……う」 頭に響く……と言うか休憩時間だろ。 こんな時間に寮、しかも俺の部屋に何の用だ。 サムがため息を溢し、そのまま部屋を出て行く。 暫く待つと、ガチャと空いたドアからサムが顔を覗かせ、袋をガサリと見せてきた。 「プリン。食うか?」 「え、いや、今は、良い……って、そのプリン、どう……?」 「弟からだ」 サムはそう言いドアを閉めたんだが、プリン? 勝史から? 何故勝史から? あの勝史が俺にプリン? どういう風の吹き回しだ? といつも冷たい勝史からのプリンに怯えてれば、またドアが開き、「何かあったら連絡。すぐ来る」とサムがそれだけ言ってドアを閉めた。 「……はぁ」 静かになった部屋。 俺の希望通りにして気を遣って出ていったサムに、やはり風邪の時は人恋しいもので、それでも傍に居てくれたらとか思ってしまうのは、頭が相当に熱でやられてるようだ。 制服を脱ぎ捨てて、布団をかぶる。 サム以外は入ってこれないから、これで本当に静かに寝れるな、と考えるが、何処かで誰か来てくれないだろうかと心細さが芽生える。 「う……」 自分が想像以上に寂しがりと言う事実が耐え難い。 いや、1回サムと氏政が居なくなった時に分かってはいたが、くそ、寂しい。 俺はこんなに弱いのか。 ピンポーン 小さくチャイムが聞こえ、布団を上げる。 気のせいか? と思いつつも立ち上がり、玄関を出るがやはり誰も居ない。 が、ドアのすぐ近く、床に土鍋が置いてある。何だこれ。
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