♯11 混沌の始まり

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   その為に、警察にリークしたのだろう。 「何それ……」 「えっと、ねぇ、大丈夫?」 「…………」  互いに名前すら知らない沙菜と運転手は、東京駅の前で動けなくなった。  終電までは時間がある。  通行人に、その姿を見られながらも周囲を気にもせず、それぞれの世界で頭を巡らせている。 「そうよね。捨てられたなら、あの人に依存する必要は無いじゃない」  沙菜は、そう言ってから運転手を見た。  そして、一瞬だけ固まる。  その瞳に光が宿り、まるで希望を見いだしたように、運転手に歩み出る。 「ねぇ、私と一緒に逃げて」 「えっ?」 「お願い、私と逃げて」 「えっ、でも……」  沙菜は、男の手を強引に引くと、終電に乗り遅れないように東京駅へと駆け込んだ。  車は、置き去りにして。      
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