♯10 陸道と陸水

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   何か、面白くない。  事件の奔流の中、ただ自分は操られ踊らされている気分。 「渡辺さん。受け取りは、終了です」 「そうか。じゃあ、すぐに退散するぞ」  受け取りは、成功だった。  その背景には、昼間の事件があった。  事件のせいで都内は混乱状態にあり、検問なども多数見られた。だが夜になると、混乱のお陰で警察の目が都内に集中し、千葉県内での受け渡しで心配の種は減った。  後は、通報される心配だけ。  どうやら、それも乗りきったようだ。  この後の段取りとしては、積み荷を積載した車で県内を北上し、茨城県経由で埼玉県に入る。  埼玉県内の道の駅で、例の男逹と合流し車ごと引き渡す。  それで、蓮次の役割は終了。  金を受け取り、また日常に戻るのだろう。  それで、良いのか。  車の後部座席に乗り込みつつも、蓮次はそう考えていた。そして、目を閉じる。  そのまま眠ってしまい、車の引き渡しになればと思うが、様々な考えが頭に浮かび寝付けない。  それでも、車は止まらない。
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