♯10 陸道と陸水

77/125
前へ
/863ページ
次へ
   ならば、隠れて調べるしかない。  蓮次は、運転手に最寄りの駅で降ろしてもらい、その駅前にあるビジネスホテルに入る。  明け方近く、チェックイン出来るのか心配だったが、気のいいフロントの親父は宿泊させてくれた。  窓から、通りを確認する。  例の二人とは違うが、似たような服装の男が、黒塗りのセダンの車内からこちらを見ていた。 「やはり、監視がついてるな」  それは、以前から気付いていた。相手にしても、蓮次に気付かせるように監視しているのだろう。  監視の意味の他に、蓮次にプレッシャーを与えているのだ。  余計な真似をすれば、妻と子供の命は無いぞ。  安っぽいドラマのワンシーンのような脅しだが、こうした見え見えの脅しが、今の蓮次には一番効果的である。  下手に、連絡も出来ない。  携帯電話は、取り上げられてはいないが、電源を入れる事は許されていない。  男逹との連絡は、別の携帯電話を渡され取り引きの時にだけ使った、それ以外の利用は禁止されている。  二台の電話を、テーブルに並べる。
/863ページ

最初のコメントを投稿しよう!

727人が本棚に入れています
本棚に追加