♯10 陸道と陸水

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        【 3 】    警視庁の捜査本部。  警察の信用がどれだけ失墜しようとも、そこで捜査を中止など出来る筈も無く、昨日の葛西臨海公園での事件の報告が行われる。  緊急会見で発表した以外に、新たな情報は掴めていなかった。  それは、拉致された捜査員の行方も含まれる。  捜査員のカツラの中には、こうした状態を予測して発信器を取り付けていた。  だが、それは効果を発揮しなかった。  騒動の直後、敷地内の植え込みに、そのカツラと発信器が捨てられているのを発見した。  それはつまり、その時点でおとり捜査がバレたという証拠。  相手は、分かっていて捜査員を拉致したのだ。 「それで、首謀者側からの連絡は無いのかね。我妻警視正」 「今のところ、何も……」 「何故、連絡が無いのかね」 「そう言われましても……」  我妻にしてみれば、そこを追求される筋合いは無いのだが、階級が上の人間に言われると苦笑するしかない。  普段は、苦笑させている立場なのだが。  捜査員は、無事なのか。
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