♯10 陸道と陸水

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   会議の論点は、そこに集中していく。  無事かとは、生存しているのかどうかという話しで、そこは無事だろうという意見が大半だった。 「拉致しておいて殺すなら、現場でしていた筈だろ」 「だが、奴等は簡単に人を殺せるんだ、陸道だと思って連れ去り。敷地内で違うと気付き、本拠地まで連れて行って殺したとも考えられる」 「だったら我々への見せしめに、遺体をどこかに放置するんじゃないか」 「既に、放置済みかもしれん」 「だったら、何かしらの連絡をしてくるだろ」  意見は、まとまる気配が無かった。  警察の総意としては、当然ながら生存を望んでいる。また、状況からしても殺されていると決めつけるには早い。  何より、遺体が出ていないのだ。 「しかし、奴等はどうして拉致なんかしたんだ?」 「それは……」  捜査員の誰もが、それに答える事が出来ないでいた。  先ほど出た話しで、陸道のつもりで連れ去ったとしても、カツラを捨てた事から敷地内でニセ者と気付いていた。  ならば、拉致する必要は無い筈だ。
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