♯10 陸道と陸水

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   抵抗する人間を拉致し、現場から離脱する事は難しい。  それよりニセ者を捨て、逃げる方が楽で安全である。  周辺には、大量の捜査員がいるのを気付いていたのだから、どちらを選ぶべきかは考えるまでも無い。  拉致するには、特別な理由がある。  そう考えるのが自然だ。  では、その理由は何か。 「まさか、睦目 陸道と交換しろと要求する気か?」  それは、ある捜査員が思い付いて溢した言葉だった。しかし、その意見には妙な説得力がある。  逮捕の危険をかえりみず、ニセ陸道を拉致したのだ。  しかも、生存していると仮定した時に、この捜査員の利用価値としては何が考えられるのか。  それは、人質として利用する事。  色々と仮定してみても、それ以外に思い付かなかった。 「奴等が連絡をしてこないのは、その交渉の準備の為じゃないのか」  我妻が、そう意見した。  元々は、昨日の葛西臨海公園で陸道を奪還する計画だった筈。  その計画に添って準備をし、シュミレーションを重ねて来たのだろう。
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