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実際のところ、絶望と小さな優しさが能力を覚醒させたかは不明だ。
あくまでも、沙菜の感覚によるもの。
ある日、街行く少女を見かけた時に、その娘がほんの数ミリ浮遊したのを見た。
本人も、気付いていない。
ただ間違いなく、足首から下が何かの力に包まれて、小さな体を持ち上げているのが見えた。
それが、少女の能力。
自身も気付いていなければ、近しい人間も気付いていない。
もしも少女がそれに気付いた時に、誰かが導いてあげなければ、あの娘は不幸な人生を送るかもしれない。
「でも、私にはあの娘を救う事は出来ない……」
能力は、使わなければ減退するもの。
それは、能力に限った事では無い。
人間の身体能力は、鍛練を怠れば減退してしまうもの。特に能力は、本人がそれを知らずに使われる事無く、いつしか体の奥底で眠ってしまう。
「でも、能力は才能……」
少女を見ながら、沙菜はそれを実感した。
これも身体能力同様、努力で伸ばせるのだろうが、成長速度や上限に個人差がある。
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