♯11 混沌の始まり

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   民営党 伍島田 将一。  伍島田は、いきなり沙菜を抱こうとしたりはせず、座敷に料理と酒を運ばせると沙菜に酌をさせた。 「男を知らぬようだな」 「えっ?」 「だから、今までで誰にも抱かれなかったのだろう」 「…………」  政治家の顔などよく知らない沙菜でも、テレビで見た事のある大物政治家が、そんなような事を言い出した。  どうやら、コンパニオン事務所を利用する政治家の間で、沙菜の存在は噂になっているようだ。  誰にも抱かれない女。 「最初に抱く事が出来るのは、誰だろうかと話しているぞ」 「そんな……」 「今どき、そこまで純情な女がいるとはな。男を知らぬのか、それとも好きな男でもいるのか?」  まるで、時代劇の悪代官のような口ぶり。  冗談のような状況ながら、これは真実であり笑えない現実だ。  それが、恐怖となる。 「では、これでどうだ?」  伍島田は、そう言うと百万円の束を沙菜の前にそっと置く。  百万で抱かせろ。  これは、任侠映画にあるような状況である。
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