♯11 混沌の始まり

103/116
前へ
/863ページ
次へ
   伍島田は、沙菜の体には触れず、紳士的に口説き落とすつもりのようだ。  だが金を積んでいる時点で、紳士的とはほど遠い事を、この男は分かっていないようである。  札束が、もう一つ積まれた。  二百万、三百万、四百万。  政治家のポケットマネーがどれ程か知らないが、沙菜の母親が最初に抱えた借金程の金が目の前に。  その出どころは、国民の税金からなのだろうか。  それとも、不正に得た金か。  五百万、六百万、七百万。  更に、金が積まれる度にヘドが出そうな程に、沙菜を嫌悪感が包み込んでいく。 「あっ、そうだ……」  沙菜は、思い出した。  この座敷に通される際に、伍島田の秘書と思われる男に軽く触れた。  それは、転びそうになって秘書の背中に手を置き、倒れないよう支えにしたのだ。  あの男なら、操れる。  しかも、伍島田から受けた嫌悪感のせいか、マリオネットの能力が高まった感じがしていた。  沙菜は、右手を小さく動かす。  その数分後。 「先生、伍島田先生っ」
/863ページ

最初のコメントを投稿しよう!

727人が本棚に入れています
本棚に追加