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伍島田は、沙菜の体には触れず、紳士的に口説き落とすつもりのようだ。
だが金を積んでいる時点で、紳士的とはほど遠い事を、この男は分かっていないようである。
札束が、もう一つ積まれた。
二百万、三百万、四百万。
政治家のポケットマネーがどれ程か知らないが、沙菜の母親が最初に抱えた借金程の金が目の前に。
その出どころは、国民の税金からなのだろうか。
それとも、不正に得た金か。
五百万、六百万、七百万。
更に、金が積まれる度にヘドが出そうな程に、沙菜を嫌悪感が包み込んでいく。
「あっ、そうだ……」
沙菜は、思い出した。
この座敷に通される際に、伍島田の秘書と思われる男に軽く触れた。
それは、転びそうになって秘書の背中に手を置き、倒れないよう支えにしたのだ。
あの男なら、操れる。
しかも、伍島田から受けた嫌悪感のせいか、マリオネットの能力が高まった感じがしていた。
沙菜は、右手を小さく動かす。
その数分後。
「先生、伍島田先生っ」
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