4054人が本棚に入れています
本棚に追加
/238ページ
「ふ…風太?」
濡らしていたのを一旦止め、髪の毛を適当に振り目の前をみてやれば
見慣れた顔、いつも通りに優しく笑う表情
「宏人…久しぶり、なのかな?」
ゆっくりとした口調でそう言いつつ、一歩一歩と足を進めて俺に近づいてくる
「あ…あぁ、何日ぶりだと思ってるんだー?ほんとに心配したんだから…」
濡れた髪の毛を掻きあげ、ため息混じりにそう言ってやる
「心配…したの?」
キョトンとした顔で、目を丸くして質問じみたように言う
「心配したに決まってるわ!つか、心配しない方がおかしいぞ」
少し風太の言葉に疑問を浮かべつつ、俺は風太に近づいた瞬間
いやな、鉄の匂いが漂った
「…ッ!?」
嗅ぎ慣れてない鼻は、一気に吐き気を増してきて瞬時に俺は鼻を塞いだ
「あっ…やっぱり匂う?」
風太は普通通りのまま、自分の服の袖を臭う
さっきまで、風太の顔の方をみていたからなのか
足元、ズボンの裾などが真っ赤になっていたのが
「着替えとけば良かったなー」
血と言う確信は持てないが、どうしてこんなにも普通に風太がこうしているのかが不思議になってきた
「なぁ……風太…」
最初のコメントを投稿しよう!