1人が本棚に入れています
本棚に追加
鼠の鳴き声 ~The town of rats~
2200年1月1日
シャルディア地方
スピリット本部
銃声が響いた。
小さな金属が姉さんの心臓を貫いた。
白銀の雪が赤く染まった。
それは薔薇のような美しい色だった。
自分に銃口が向けられた。
再び銃声が響いた。
痛みは無かった。
意識が薄れていく中で姉さんが自分に手を伸ばしている。
そして目の前が黒く染まった。
2205年1月1日
シャルディア地方
俺は5年前の場所に立っていた。
そこにはさびれた建物と5年前この場所で死んだ姉さんの墓石が物寂しげに建っている。
「あれから5年か...」
俺はそっと墓石に掛かっているペンダントを撫でた。ペンダントの中には姉さんの写真が入っている。
実を言うと、なぜ自分が助かったのかがわからない。気が付いたら病院のベッドの上に寝ていた。
その後医者が来て案内された先に姉さんがいた。
顔に白い布を被せていた。
姉さんは胸を撃たれて死んでいたらしい。
俺は医者に聞いた。
「何で俺は生きてるんだ?」
そしたら医者は不思議な顔をして言った。
「何を言ってるんだね君は、怪我も何もない人が死ぬわけがないだろう。君はお姉さんの隣で倒れていたから一緒に運んできただけだよ」
その言葉を俺は理解できなかった。
その後俺は異常無しと判断されて病院から追い出されるようにして出ていった。
スピリットは場所を変えていたため姉さんの仇を取ることすらできずこの5年の間過ごしてきた。
病院を出たあとは行く宛がなかったので元スピリット本部の建物を根城に何でも屋として金を集め生活していた。
姉さんの墓は4年前に建てた。
かなり質素ではあるがその墓石には文字が刻まれている。
[2200年1月1日
十六夜 三日月]
姉さんの遺品が無かったため写真の入っているペンダントを墓に掛けてある。
毎日俺は墓に手を合わせてから仕事をしていた。
このシャルディア王国はシャルディア地方の首都であり、中心部には大きな店などがたくさんある。
治安が良く技術も発達しているが、この国の西にあるウエストベル市の旧市街はかなり治安が悪く2つの不良グループが勢力争いをしている。
ここには国の法律が適用されないため無法地帯と呼ばれ、旧市街の人々は市の人から市外の鼠ということで
[アウトラット]
と呼ばれている。
最初のコメントを投稿しよう!