鼠の鳴き声 ~The town of rats~

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ウエストベルは王国の中でもっとも 治安が悪く他の市より人は少ないのだが旧市街から5年の間出ていない俺にはそれでも多く感じていた。 「旧市街は人が少ないからなぁ、まぁ、あんなとこに住む物好きなんて滅多に居ねぇか」 そんなことを言いながら空を見ていたら急に後頭部に衝撃がはしった。 「アウトラット風情が何のようだ!」 どうやら感覚的に金属バットで殴られたようだ。 「ははっ、死んだんじゃねぇの」 「弱っ、アウトラットってこの程度かよ」 どうやら俺が旧市街から来たバスに乗っていたのを見ていたらしい。 「止めにもう一発やっとくか」 こいつらはウエストベルの不良どもだろう。 「じゃあ、いくぞ!」 不良の一人がバットをおもいっきり振り上げて俺の頭をめがけて降り下ろした。 「なっ、バットが...折れた...」 俺は起き上がりながら笑って言った。 「この程度かよ」 不良達が後退るのを見て俺は言った。 「悪いけど、そんなもんじゃ俺の体に傷ひとつ付けられない」 それを挑発と受け取ったのかバットを持った男はおもいっきり殴りかかってきた。 「遅い...」 俺は身を低くしてバットをかわして足元にあった小石を男の腹に投げた。 次の瞬間男は体をくの字に曲げて民家を五件貫通して吹き飛んだ。 言葉通りに。 「ばっ...ば...化物だ!逃げろ!」 他の不良は全力疾走で逃げていった。 「つまんね...」 そしてバスが来た。 バスに乗って30分ほどたつとクロスベル市が見えてきた。 「面白いことがあるといいんだがな、この無駄な5年間を繰り返さないように...」 そして十六夜 盃は5年振りにクロスベルへと降り立った。
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